フコイダン
スウェーデン、ウプサラ大学のキリン教授が、褐藻類(海藻)から酸性の粘液質物を初めて単離し、フコイジンと名付けました(1913年)。その後、多糖類の語尾に「アン」を付けるという国際糖質命名規約によって、現在はフコイダンと呼ばれています。主な構成成分はフコース、ガラクトース、マンノース、グルクロン酸、キシロースなどですが、同一海藻から抽出したものでもモル比が異なることが多く、フコイダンもアルギニン酸や寒天などと同様に、不均一な分子といえます。海藻に含まれるフコイダン含有量は、海藻の種類によって大きく異なり、コンブ科の場合1〜2%、ヒバマタ科の場合20%(乾燥海藻量に対して)が含まれていますが、種類によって異なるだけでなく、生育場所(環境)や季節によっても大きく異なります。
フコイダンのはたらき
褐藻海藻には、粘液管といわれる管があり、周囲の分泌細胞ゴルジ体で合成されるフコイダンが、この粘液管に分泌されます。海藻体におけるフコイダンの役割は、藻体の表面が傷ついたときなど、そこから細菌が進入できないように藻体を守るとか、また干潮の際、空気中にさらけ出された藻体が乾燥しないように保護する働きをもつと推定されています。事実、浅い所に生育しているまたは海水表面に浮いている褐藻海藻のほうが、深いところに生育する褐藻海藻に比べて多量のフコイダンを含んでいます。
参考資料
G.F SPRINGER, H..A WURZEL, G.M MCNEAL.JR, ANSELL. And M.F DOUGHTY
海藻の本 西沢一俊・村山幸子(研成社)
海藻の生体内吸収はほとんどゼロ
海藻体は、表面が高分子のアルギン酸で覆われており、さらには非水溶性食物繊維で構成されています。特に海藻表面を覆っているアルギン酸は、極めて高い粘性をもっており、その分子量は50万以上といわれています。海藻体がこのような高分子粘液で覆われ、されに非水溶性食物繊維でできている背景にはその自然界の生育環境が大きく影響しています。
高濃度の塩分を含み、満潮・干潮の影響を受ける海洋で生育する海藻体は、常に環境と戦わなければなりません。特に、浅瀬に生育する海藻は干潮時長時間太陽にさらされるため乾燥から身を守る必要があるとともに、外界からの細菌汚染や、物理的化学的刺激から自分自身を保護する必要があります。事実、浅瀬や過酷な環境に生育する海藻には、多くのアルギン酸やフコイダンを含んでいます。このような性質をもった海藻体は、私たち人間の消化器官で消化・吸収することがほとんど不可能な植物なのです。食べた海藻がそのまま便となって排出されたことを見た経験がある方も多いことでしょう。
低分子加工された海藻エキスが身体に吸収する
海藻には陸野菜には含まれない多くの栄養素が含まれています。
基本的に海藻には、海洋成分が濃縮されていると思ってください。
ビタミン類、ミネラル類そしてなんといっても微量元素がバランスよく含まれています。フコイダンに代表されるアミノ多糖類や各種栄養素は、海藻体から水溶性の形で抽出され、身体に吸収しやすい低分子化されることによって初めて身体にスムーズに吸収されるのです。この抽出方法や低分子化方法によって抽出される成分は全く異なります。私たちの研究では、化学薬品を使用した抽出方法は時間的にも容易にフコイダンなどを抽出できますが、この化学薬品を用いた抽出エキスは動物実験において効果が認められなかっただけでなく、逆に悪影響を及ぼす危険性があることを確認しています。長い時間をかけても、じっくりと抽出することで、細かな分子量組成の海藻エキスを抽出することを私たちは重要視しています。
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